◇2014年6月『住民と自治』&香川自治研「月報」をお届けします

◇6月『住民と自治』の主な記事

●特集●平成の大合併を検証する

  • 「平成の大合併」15年目の検証―もう一つの自立・連携型自治を求めて 加茂利男
  • 住民から自治を遠くした平成の大合併―合併の圧力に屈しなかった日野町
    インタビュー 藤澤直広日野町長に聞く
  • 合併後15年を経過した兵庫県篠山市
    ―合併算定替え措置の終了と「篠山再生」のゆくえ―  柏原 誠
  • 合併後行政サービス悪化―住民自治の機能が今後の課題  河村 穆
  • 広域合併した長岡市と佐渡市、
    自立を選択した粟島浦村と出雲崎町の特徴を検証する  高橋 剛
  • 平成の合併検証―合併で自治体はどうなったか―三重県の急がれる合併検証  新家忠文
  • 書評 黒田兼一・小越洋之助編『公務員改革と自治体職員』  緒方桂子
  • 公務員になったあなたへ―自治体職員としての気概  晴山一穂
  • 韓国地域財団創立10周年記念シンポジウムに参加して  川瀬光義
  • 自治体初の原発裁判 安倍政権の原発推進にストップかける闘いを  紺谷克孝
  • 第56回 自治体学校in仙台からのお知らせ

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◇6月「月報」の記事

  〇 平成26年度香川県当初予算を議論する 田村彰紀

  〇瀬戸内国際芸術祭2013と地域政策に関する試論(⑬) 田村彰紀

  〇いいかげん地域学(その5・こんぴらを追う2) 佐藤孝治

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◆香川自治研ホームページを更新中です。瀬戸芸祭レポートが読みやすくアップされています。

瀬戸内国際芸術祭2013と地域政策に関する試論~その3 宇野~

 

4.岡山・宇野港

 

(1) 今日も青空が広がっている。10:00高松発の四国フェリーで宇野港まで1時間。船客は20人余で、芸術祭客らしきは2~3人だ。それでも小豆島、女木島、男木島方面へのフェリー乗り場には行列が見られた。若い人たちがガイドブックを手にしているので芸術祭客だと分かる。

宇野港の芸術祭案内場は、プレハブ式だが幟や看板でけっこう賑わっているかに見える。いつものように、作品案内と宇野港の地図をいただく。記念にフラッグ型ハンカチを買い求めた。

JR宇野駅前に「海の贈り物」オブジェが天空を突いている。海の生き物が天をめざして駆け上がっているところが面白い。案内図を片手に、突堤の先端に向かって歩く。作品152「宇野のチヌ」と作品153「舟底の記憶」が異様な雰囲気で迎えてくれる。どちらも日常の廃材、漂流物を素材にして、宇野の魚とスクリューを組み合わせている。「遠くから鑑賞すべき作品ですね」とお年寄り集団がつぶやいていた。

宇野は臨海港湾産業都市であるとともに、「連絡船の町」であった。人口の激減は、昭和49年のオイルショックからはじまって、今にその余韻を引きずっている。人口ピークは昭和50年の7万8千人で、現在は6万4千人である。その間に、瀬戸大橋や明石大橋の開通により、「連絡船の町」は交通環境の変化が直撃しているかのようだ。

港湾産業(造船など)や連絡船の廃止などで、広大な岸壁や突堤が広大な空間として残されているのが現状である。

その広大なスペースの有効利用計画も策定されているようだが、遅々として進んでいないようだ。突堤には「愛の女神像」「碇のオブジェ」、かつての商店街には芸術写真やシャッター壁画ペイントがある。「連絡船の町」の将来テーマは、<音と写真の町>に生まれ変わろうという方針らしい。なぜ音と写真の町なのかが分からない。

(2) 宇野の街中を歩く。宇野・築港周辺マップを片手に、もう一方でデジカメを構える。おおげさに散策ルートを考慮しないでも、およそ1時間ほどで一回りの見学はできる。JR宇野駅舎にターミナルの風情、かつての造船工場の残されている「おばけ煙突」、商店街はシャッターと間口の狭い飲み屋、旅の宿の看板が淋しい。空き店舗や空きスペースを利用して、アート工房や若いアーチストが巨大な造形作品に挑戦している。また、散策していると、かつての連絡船係留岸壁遺構やちょっとしたメモリアルパークが整備されているのが連絡船の町を思い起こさせる。

宇野駅北側から宇野港を望む
宇野駅、宇野港を望む

■3 月26 日メモ■

  1. 臨海港湾産業の衰退のど真ん中で、文化芸術による「町おこし」が可能か。
  2. 「音と写真の町」をめざしているようだが、地域人の関心度合いはいかがであろうか。
  3. 人口6万の町では、地域外からのアーティストの活躍に期待せざるを得ないか。

(3) ここで文化経済学的な考察

芸術作品を分類してみる。絵画、彫刻などの個別分類では複雑怪奇となる。そこで、文化経済学的に文化芸術を商品に見立てて、<生産~流通~消費>過程のうち<消費>に注目してみる。

すなわち、芸術作品は①ただちに消費されてしまう場合(作品の消失)と②消失されずに物質として維持されるもの、に区分されるとする。例えば、①の芸術作品としては、料理、演劇、芝居、音楽などがある。これらは味わったり、鑑賞してしまえばたちまち消失する。例え映像化されても、食味、その場の感動、共感などは再現されない。つまり「ほんもの」ではなくなる。②は、絵画、彫刻、オブジェ、建築などである。これらは美術館などに展示され続けていると、正の外部性として威光を放つ。歴史的変遷を経ると<ヘリテイジ>なものとなる。劣化や滅失は考慮外とする。

一方で、芸術作品の生産過程をみる。①、②ともに人間の働きかけがあってはじめて作品となることに共通性が認められる。流通過程では、①は非流通性となり、②は流通性が可能である。芸術作品を消費段階で捉えたときにはじめて、文化的価値に性向(性質の傾向)区別ができ、①では限定的な消費者(享受者)となり、②では不特定多数の時間制限のない享受を得られるであろう。

これらを瀬戸芸祭の特徴である現代アートに適用してみると、現代アート作品、アートイベントなどのインスタレーションは、「期間が終われば撤去」されるとされており、どちらかというと①分類で属すと考えられるだろう。限定された消費者(享受者)の一時的な感動と共感を現代アート作品は与えるのみである。

(つづく)

田村彰紀/月報348号(2013年7月号)

 

瀬戸内国際芸術祭2013と地域政策に関する試論~その2 沙弥島~

 

3.沙弥島

 

朝から快晴。桜満開のニュース。四国・香川はおむすび山にポッポッと白い山桜。東山美術館の駐車場に誘導される(無料)。案内ブースでリーフレットをもらい、作品場所を確かめる。

エリアが狭いため親切な案内板が設置しやすい。鑑賞者の動線がスムースにつくられている。若い親子連れ、シニア夫婦などに紛れて若者も見える。

沙弥島は「J1 エリア」のみで、春期間だけ(3 月20 日~4 月21 日)なので小豆島よりは鑑賞者が多いわけだ。作品100(階層・地層・層)は讃岐の山にふさわしい形だが、表面の芝生はこれから生育するという。時間の経過とともに変化する作品として工夫がある。

作品101(沙弥島・西ノ浜の家)、作品103(そらあみ)と歩いたところで、店が賑わっている。島スープを500 円で注文する。すでに何とか沙弥島弁当は売り切れである。あとで気付いたが、島スープは作品164 のようだ。

旧沙弥小中学校校舎を活用して、教室に作品102(名も知らぬ遠き島より等)がある。作品のうち、映像作品が教室の黒板を利用して流れている。これはこの場所がもっともふさわしいものだとは思えない。

沙弥のなぎさに出てみると、作品104(八人九脚)が瀬戸大橋と瀬戸内海を眺めている。当然、その椅子でくつろぐ鑑賞者たち。海辺の風景をなしている。

■3 月22 日メモ■

  1. 作品鑑賞の途中に、地域の歴史を発見する。これぞ地域の文化資源だと思う。
  2. かってな推測だが、現代アートに関心を示す御仁はその地域の歴史や伝統、民俗文化などにも興味をもっているだろう。しからば、瀬戸芸祭を動機に、地域の文化資源を前面に押し出すべきであろう。瀬戸芸祭ガイドブックには少し触れているが…。
  3. 芸術家、芸術系大学生に作品制作の場所と機会を瀬戸芸祭は与えている。
  4. 出展芸術家はどのように選定しているのだろうか。北川フラム、福武財団が築いてきたネットワークか。

(つづく)

田村彰紀/月報347号(2013年6月号)

瀬戸内国際芸術祭2013と地域政策に関する試論~その1 小豆島~

瀬戸内国際芸術祭2013・春会期が、3月20日から4月21日まで開催されました。

3年前の第1回瀬戸芸祭には、93万人が真夏の現代アートを楽しみましたが、たいへんな混雑だったようで、第2回瀬戸芸祭は春・夏・秋に分散しての開催となりました。

今回、春会期の瀬戸芸祭を覗いてきましたので、地域政策および文化政策の観点から「瀬戸芸祭日記」を開陳しておきましょう。 日記風ですので、お楽しみください。

 

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◇2014年5月『住民と自治』&香川自治研「月報」をお届けします

◇5月『住民と自治』の主な記事

●特集Ⅰ●消費税増税で自治体はどうなる

  • 消費税増税を問う湖東京至
  • 消費税増税による公営企業への影響―住民負担が強まる― 中村幸夫
  • 消費税増税と診療報酬のマイナス改定で病院経営はダブルパンチ ―「医療崩壊」の新たな要因になる危険― 山本 裕
  • 中小企業・小規模企業者を押しつぶす消費税増税 小林俊光

●特集Ⅱ●未来を拓く「新しい時代の地方自治像」

  • 未来を拓く「新しい時代の地方自治像」白藤博行
  • タスク1 総論白藤博行
  • タスク2 地域経済鈴木 誠
  • タスク3 公民協働・ガバナンス榊原秀訓
  • タスク4 大都市制度廣田全男 西村 茂
  • タスク5 税財政平岡和久
  • タスク6 震災復興岡田知弘

〇 国・文科相が教科書採択で竹富町に直接「是正要求」 渡名喜庸安

  • 書評「『福岡の暮らしと自治』別冊臨時増刊号」 金子 勝
  • 第56回自治体学校IN仙台プレシンポジウム 被災地から「この国のかたち」を正す 今西 清

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◇5月「月報」の記事

●地方分権改革の現段階~地方自治の行方(下) 田村彰紀

●瀬戸内国際芸術祭2013と地域政策に関する試論(⑫) 田村彰紀

●いいかげん地域学(その4・こんぴらを追う) 佐藤孝治

 

 

 

 

◇2014年4月『住民と自治』&香川自治研「月報」をお届けします

 

◇4月『住民と自治』の主な記事

●特集Ⅰ●東日本大震災から3年 ―岩手・宮城の人々が直面している現実と課題―

  • 被災地の今――何が問題か? 井上博夫
  • 岩手県漁民組合誕生の意義と課題 佐藤照彦
  • 仙台市の宅地被害の復旧と残された課題  宅地被害ネットワークの取り組み―緑ヶ丘四丁目被災者会から仙台市全域に  宮野賢一
  • あすと長町仮設住宅の取り組みと課題 飯塚正広

●特集Ⅱ●いま、住民運動資料の保存は

  • 市民活動記録保存の意義と課題 高木恒一
  • 自治体文書館と市民運動資料 辻川 敦
  • 公害被害者運動資料の保存と資料館の役割  林 美帆
  • 残そう、市民の記録を! つくろう、資料収集と活用の拠点を!  江頭晃子

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◇4月「月報」の記事

・地方分権改革の現段階~地方自治の行方(中) 田村彰紀

・瀬戸内国際芸術祭2013と地域政策に関する試論(⑪) 田村彰紀

・いいかげん地域学(その3・また龍を追う) 佐藤孝治

◇2014年3月『住民と自治』&香川自治研「月報」をお届けします

◇3月号『住民と自治』の主な記事

●特集Ⅰ●東日本大震災・福島第一原発事故 ―福島の人々が直面している現実と課題―

  • インタビュー 蒔かぬ種には実らない  ―あぶくま地域のかーちゃんの力を結集 渡邊とみ子
  • 原発災害被災地 福島における現実と課題 丹波史紀
  • 原発事故の被害補償と東京電力、国の責任 除本理史
  • 福島で生きること。それは、「侮蔑」をはらすこと。  ―福島の農民がたたかい続ける意義 根本 敬

●特集Ⅱ●‘13・12・13中教審答申を受けて

  • 教育委員会制度をめぐる課題 荒井文昭
  • 中教審答申は学校現場に何をもたらすか  ―首長に教育行政の権限を移してはならない― 河合美喜夫

  • 二〇一四年度政府予算案と地方財政への影響 鶴田廣巳
  • 圧勝した名護市長選挙 吉田 務
  • “脱原発のしくみ”をつくる地方自治  ―「島根県エネルギー自立地域推進基本条例」を直接請求― 保母武彦

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◇3月号「月報」の記事

○地方分権改革の現段階~地方自治の行方(上) 田村彰紀

○瀬戸内国際芸術祭2013と地域政策に関する試論(⑩) 田村彰紀

○自治体研究社の本と研究会のご案内

○いいかげん地域学(その2・龍を追う)佐藤孝治

◇2014年2月号『住民と自治』と香川自治研「月報」をお届けします

◇2月号『住民と自治』の主な記事

●特集●自治体が自治体でなくなる危機―自治体アウトソーシングの現段階

  • 自治体が危ない~自治体民間化(アウトソーシング)の現段階と課題 城塚健之
  • 国家戦略特区・構造改革特区・総合特区の危険性 山口真美
  • 「PFI神話」の崩壊――あらためて公共を問う 尾林芳匡
  • 指定管理者制度の抜本的見直しは喫緊の課題 角田英明
  • 地方独立行政法人の現況と課題 野本夏生
  • 進む公務労働者の民間化 河村 学
  • 事例 自治体給食調理職場の取り組み  民間委託の中止、給食調理員の新規採用を実現 久保貴裕
  • 事例 学童保育を市民の手に取り戻す取り組み 宗像市の指定管理者制度導入で「宗像市学童保育を考える会」発足 森本茂利

○書評 岡田知宏・自治体問題研究所編 『震災復興と自治体「人間の復興」へのみち』鈴木 誠

○書評 中山 徹・杉山隆一・保育行財政研究会編著  『直前対策! 子ども・子育て支援新制度PART2』藤井伸生

○2013年度 「まち研」活動に関する調査結果 自治体問題研究所事務局

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◇2月号「月報」の記事

○地方分権改革から20年を経た地方自治体の課題  田村彰紀

○瀬戸内国際芸術祭2013と地域政策に関する試論(⑨) 田村彰紀

○いいかげん地域学(その1・そんな馬鹿な) 佐藤孝治

◇2014年1月『住民と自治』&かがわ自治研「月報」をお届けします

あけましておめでとうございます

◇『住民と自治』の主な記事

●特集●若者の運動が未来をつくる

  • 現代を生きる若者の社会―運動中西新太郎
  • 新春インタビュー “場”から広がる若者の運動 岡﨑加奈子・玉木信博・山田真吾 聞き手・朝岡幸彦
  • これが私の生きる道 地域経済に貢献できる業者を目指して 有坂ちひろ
  • キラ☆キラ人が集まる青年団田中 潮
  • 「学び、参加し、平和をアピール」、民医連反核平和自転車リレー 岸本啓介
  • 新年のご挨拶岡田知弘
  • 「国立市の元市長に対する求償」は許されない・・・・・・真の住民自治を問う 窪田之喜
  • 「公務員制度改革」は自治体に何をもたらすのか 熊谷守朗

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◇「月報」の記事

●2014新年にあたって

●瀬戸内国際芸術祭2013と地域政策に関する試論(⑧) 田村彰紀

●私の目で見た中国農業(その13・中国人の性3) 佐藤孝治

★2013年12月『住民と自治』・香川自治研「月報」をお届けします

★『住民と自治』の主な記事

●特集●生活保護「改革」と命の重み

  • インタビュー いのちの重みと生活保護法-生活保護基準は「命の最終ライン」 稲葉 剛
  • 現代の貧困に社会保障はどう立ち向かっているか 岡部 卓
  • 生活保護基準切り下げにより、侵害される子どもの教育権 長友祐三
  • 生活保護一斉審査請求の意義と、これからについて 吉田雄大
  • 岐路に立つ生活保護行政 渡辺 潤

  • 書評『長友先生、国保ってなんですか』 安井喜行
  • 特定秘密保護法案と地方自治体 田中 隆
  • 東京への五輪・パラリンピック招致をどう見るか-世界都市への成長戦略とスポーツ本質論 市井吉興
  • リニア、何が問われているのか? 竹内 智
  • 柏崎刈羽原発の再稼働に道を開く 規制基準適合申請の撤回を 持田繁義

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★「月報」の記事

・瀬戸内国際芸術祭2013と地域政策に関する試論(⑦) 田村彰紀

・自治体研究社『震災復興と自治体』発刊

・私の目で見た中国農業(その12・中国人の性2) 佐藤孝治