(3)当初予算の基本的スタンス
「知事の提案理由説明」から、平成26 年度の主要施策の力点について概観しておこう。基本的スタンスは、前号で指摘したようにアベノミクスの経済成長に追随した立場をとっている。「成長」により安定した生活や雇用の確保、観光・交流人口の増加が図られ、好循環の効果が県政の発展をもたらすとしている。
冒頭に掲げる地域経済の発展指針は「香川県産業成長戦略」(平成25 年7 月策定)で、その具体的施策は希少糖、オリーブ、アートという地域資源を活かしたプロジェクトの推進としている。知事説明では、これらの施策が「国の方針にも呼応するものと考えています」と明瞭に位置づけている。その一方で、成長だけではなく、南海トラフ巨大地震への備えや全国的に高い位置にある交通死亡事故への対策にも触れている。
(4)当初予算の主要な施策
主要施策は3 本の柱にまとめている。第1は「元気の出る香川づくり」、第2 は「安心できる香川づくり」、そして第3 が「夢と希望あふれる香川づくり」となっている。
第1 の「元気の出る」施策として、①かがわ希少糖ホワイトバレープロジェクトでは希少糖研究拠点の強化(香川大学支援・民間研究所の誘致など)と希少糖を使用した商品開発である。②番目はオリーブ産業強化プロジェクトで、オリーブ牛、オリーブハマチなどの商品開発支援と生産拡大への推進を図るものである。③番目はK-MIX 関連産業育成プロジェクトである。K-MIX とは、かがわ遠隔医療ネットワークのことで、医療・福祉分野での付加価値の高い製品開発への支援とされている。また、福祉・介護分野などでの健康関連産業の創出に取り組むものである。④番目はものづくり「温故知新」プロジェクトである。炭素繊維複合材料関連産業や知的ロボット関連産業の育成と技術者育成、大手企業との展示商談会への支援のようである。最後の⑤番目はアートの香川プロジェクトである。瀬戸芸祭の開催などから「アート県」としての地域イメージの定着化により観光客などの誘客活動から交流人口の増大を期待するものである。
以上から、「元気の出る」プロジェクトは特定の産業にかかる商品開発を主眼としたもので、その波及効果に期待するものであろう。
第2 は「安心できる」施策である。子育て支援を前面に掲げて、市町に対して県独自の支援制度を創設するとしている。結婚への出会いの場の創出・拡大に取り組み、妊娠・出産などにも県単独の上乗せ補助を行う。また、保育所入所の待機児童の解消や放課後自動クラブの支援体制の整備に努めることを提起している。
安心して暮らせる地域づくりのために、がん検診の受診率向上、糖尿病の重症化予防に管理栄養士によるモデル巡回相談を実施する。高齢者対策では、介護サービスの質の向上や給付の適正化と表現しており、国の介護保険制度改革と軌を一にしている。
第3 は「夢と希望あふれる」施策である。中軸は教育力の向上としている。少人数指導、少人数学級、学力向上という3 つの柱を掲げる。小学校1 年生から4 年生で35 人学級の実施、小学校低学年や発達障害などへの教員の増員配置、学力向上に向けた授業改善、教員の指導力の向上などに取り組むものである。
また、問題行動にはスクールサポートチームの学校派遣、スクールカウンセラーの拡充、スクールソーシャルワーカーなどの活用を図るとしている。もう一方での強調施策は観光立県香川の実現である。瀬戸内海国立公園が指定80 年になること、四国88 か所霊場開創1200 年にあたること、昨年の瀬戸芸祭では107 万人の入場があり、引き続き次回の準備に取り組むことなどが知事説明されている。
以上、「安心できる」施策と「夢と希望あふれる」施策などのほとんどは国の問題関心と施策に呼応するものである。ただ観光立県施策は周年に着目したものであり、自然景観や歴史資源に光を当てることとして評価できよう。
(5)知事説明と代表質問
当初予算を審議する定例会は、2 月19 日から3 月20 日まで開催された。代表質問の一部を紹介しておく(「ほっと県議会かがわ」Vol.56)。当初予算案についての知事答弁は、希少糖などの地域資源を生かしたプロジェクトなどが地域経済の活性化に結びつくとしている。また、防災・減災対策、交通死亡事故の抑止対策、がん対策などで安全・安心の実現を図るという。農地の利用集積に関しては、香川県農地機構を創設して、農業の担い手の掘り起しと農地のマッチングなどで対応する。医師確保対策としては、医学生就職資金の活用で公的病院に医師の配置をしたいとする。今後の地方交付税制度については、偏在性の大きい地方法人課税を交付税の原資とし、偏在性の小さい消費税を地方消費税にする税源交換を検討することという見解をしめしている。
以上、地域資源を生かした施策は重要なことであるが、特定の分野だけではなく幅広い取り組みが、県勢を足元から強くすることを強調しておきたい。農地集積や医師確保対策などでは関係者の意見を十分に取り入れることを期待したい。次回は具体的な施策と予算配分について検討したい。
(T)
月報360号(2014年7月号)